コラム&エッセイ

「iinaのはじまり」

みなさまいかがお過ごしでしょうか。みなさまにこちらを見ていただけている今は、まだまだ残暑という季節かもしれませんね。私は今、蝉の声が聞こえる中でこれを書いています。
前回は「iinaのVEGANとは?」を書かせていただきました。今回は私がVEGAN FOODに出会ってからのことを書きたいと思います。
それではついてきてね!Here we go!

▼ 前回のエッセイ
「iinaのVEGANヴィーガンとは?」

ヴィーガンフードを始めとするヘルシーなマクロビオティックフードやベジタリアンフードに「衝撃の出会い」といったものは正直ありませんでした。前回も書いたように、私は幼少の頃から野菜や穀物の食事が好きで自然とそのような食事を自ら好んでしていたということもありますし、父が「自分で作ったもの至上主義」であり、妹が結構重いアトピー性皮膚炎だったこともあり、家庭でも野菜中心の料理が普通でした。それでも完全菜食というわけでは全くなく、普通の食卓に野菜の割合が多いといったものです。幼い私はその中からピーマンを摘まみ出すかのごとく肉をよけたり、自分のお弁当には肉を入れないでくれと母に頼んでいました。ただ、これがヘルシーな食事なんだという自覚は特に持っていませんでした。

料理の専門学校に通うため18歳で地元を離れ、東京で暮らしても基本的な食の好みは変わらなかったのですが、外食やコンビニ食が中心となっていました。学校の授業で作ったケーキをワンホール食べたりパンを何個も作って持ち帰りそれを消費したりでだいぶ食生活は乱れていたと思います。

20歳の時に卒業、就職し入社したところが今思えば俗に言うブラック企業で(笑)。表向きヘルシーなイメージを謳った、とあるキッチンで包丁を揮っていたわけですが、あるとき腕の痺れで包丁が持てなくなってしまい、なんと入社3ヶ月で退職という道を選ばざるをえなくなってしまいました。

・・・と書きましたが。本当は仕事を辞めたくて辞めたくて仕方がなかった。仕事をしている時に一度も幸せだと思ったことがなかった。身体が辛い、精神的にも辛い、早くあがりたい、お客さん早く帰ってくれないかなーって思っていた。ラストオーダー前に注文が入ると残業になるので、なんで注文するんだ?注文しないでよって思っていた。人に美味しいものを提供すればするほど、自分の食べるものを貧しくなっていった。忙しくなればなるほど自分がお腹が空いている時間にまともに食事を摂れない。賄いはいつも肉たっぷりのものや、提供するもので揚げ損じた物。腕自慢の男性調理師たちがどうだと言わんばかりに振る舞う。肉が食べられない、と残すととわがままだ、せっかく作ったのにといった顔もされた。誰よりも食べることが好きなのに、私は賄いに手を出さなくなった。誰よりも食べ物のことが大好きなのに、全てが嫌になった。

こんなことをしていて、お金を出して食べに来てくれているお客さんに早く帰って欲しいといった感情を持ちながら働くことって、本当にお客様に幸せを与えられているのだろうか?罪悪感だけが増えていった。ヘルシー、健康をお客様に謳っておきながら、身体も精神も不健康な自分を恥じた。私はもう二度とお金をもらって包丁を握ることはない、と決意しました。辞めることは必至でした。

すごく当時の目線で書いてしまったので超辛い思い出!みたいに書いてしまいましたが、かわいそうだった私を演じたいわけでは全くないです(笑)。私が肉を食べられないからといって気を遣ってくれたこともありました。病院に行く時間を作ってくれたり励ましてくれた人もたくさんいました。今となっては私の面白い人生の一部になっているからめでたしめでたし、ということで丸く収まっています。

ただ身体が悲鳴をあげていたことに嘘はなく、病院にも行き診断書を書いてもらいましたし、最初は腕だけだった痺れが酷い時は両四肢にまで至っていました。汗が身体半分からしか出ないといったような自律神経失調の症状も出ていました。

一度壊れかけた身体は料理の仕事を辞めてからもすぐに良くなることはなく、不調を抱えたまま日々を過ごしていました。その頃の私は特にやりたいことや行きたいところもなくただなんとなくやり過ごす毎日を送っていました。もう二度と包丁を握らないと決めていたので、仕事は食とは関係のないことで自分の興味の示すままに色々と挑戦してみようと様々な職を経験しました。その中で就いたある職が「日本初のヴィーガンコスメ」という謳い文句でアピールをしていたことで、そこで私は「VEGAN」という言葉を初めて認識したと思います。動物実験をしない、動物を殺さない素材を使う信念でその会社は とても魅力的なアイテムをたくさん生み出していました。思い返すと「ヴィーガンフード」という言葉より「ヴィーガンコスメ」の方が先に出会っていたということです。

働きながら、美味しいものやヘルシーフードが好きなのは昔から変わっていなかったので、様々なカフェに足を伸ばしていました。

 

衝撃的な玄米ご飯との出会い

引き続いて体調も芳しくない私がある日ふらっと入ったとあるヘルシーなカフェで食べた玄米ごはんを口にした時に、お腹の底から「うんめえええええええええ(茨城弁です)」とうなりました。それまで玄米ごはんは色々なところで食べたことがあったけれども、なぜか撞かれた鐘の中にいるようなじわーんと響くような衝撃の美味しさでした。これが「iinaのVEGANFOODとの出会い」と言ってもいいでしょう。

ふとテーブルを見ると、「マクロビオティックはご存知ですか?」のポップのようなものが。詳しくはこちら、とURL。辿ってみると、マクロビオティックとはなんたらかんたら。陰陽がどうたらこうたら。え!食べ物で身体と心を自分でコントロールできるの!?しかも調理法で食べ物のバランスの舵取りもできる!?目から鱗がぽろぽろと。。面白い。。ビタミンがどうとかカロリーゼロがどうとかの時代に何と興味深い考え方ではないか!すっかり私はマクロビオティックというものがどういうものなのかをもっと深く知りたくなっていました。

気付けば私は、クシマクロビオティックアカデミーの門を叩いていたのです。これが私のヴィーガンフードとの出会い(厳密に言うとマクロビオティックフード)、そしてiinaの始まりとなります。
勉強をしていくと、自分が好んで食べていたものがことごとくマクロビオティックで推奨する食材に当てはまり、なにこれ、私が好きな食材ばっかりじゃん。肉も魚も食べることを推奨されていないし、最高にウェルカム!!(笑)と、私は特に無理をすることはなくマクロビオティックの魅力に取り憑かれていきました。

当時は学べば学ぶほど、面白く感じれば感じるほど、肉や添加物を摂ることに異常な恐怖と罪悪感、それを知らない人への軽蔑心が芽生えていたことも告白します。昔はただ好まないからあまり口にしなかっただけのものを、禁止されると(誰も禁止していないのだけど)だんだんと頭でっかちになり、何を食べたらいいのかわからなくなってしまった時期もありました。

 

ブラウンズフィールドでの経験から生まれた自分らしさを追求したヴィーガンフード

クシマクロで出会った中島デコ氏が主宰するブラウンズフィールドへ移住しライステラスカフェを任されてから(詳しくは「ブラウンズフィールドの丸いテーブル」を読んでいただけたらとっても嬉しいです。)は、陰陽五行の知識だけで物事をはかるのではなく、もっと自由にもっと季節と共に生き、もっと自分の心の声を素直に聞く、ダメだと禁止するマクロビオティックではなく、もっと幸せに生き自分という人間を最大限に活かす方法としてのマクロビオティック(大きな命の術)というところに自分の中で行き着きました。

だって、デコさんって面白くて、有名なマクロビオティック研究家で名を知られているのに、海で遊んでいたらイワシが大量発生して海に打ち上げられていたのを見て、でも袋を持っていなかったからどうしようもなく、持っていた軍手に大量のイワシを詰め込んでブラウンズフィールドに持って帰ってきたんです。ね、「肉や魚を食べない」という×を付けるマクロビオティックではなく、自然と共に生きるその姿がまさに超マクロビオティック!本当に面白い人だなあと思いました。

マクロビオティックというものに出会って、陰陽五行に基づいた考えのもと季節や風土に合った食事法、調理法で養生の意味が色濃く出ているように感じたので、自分の作るものはもう少しフラットで彩りや美味しさを追求し、スパイスやハーブなども賢く使う料理が自分らしい、と感じたので私のお料理はヴィーガンフード(完全菜食)のジャンルと置いてます。ただ前回も書いた通り、私の料理は私の料理でしかないので皆さんがどう感じてくれるかはこれからも皆さん任せです。

ヴィーガンフードとの出会いや思いは人それぞれ違います。自分の不調やダイエット、ご家族の体調管理、流行や友達の影響。それぞれに様々な出会いがある。もしお会いすることがあれば、皆さんの出会いや思いもたくさん聞いてみたいな、と思っています。

今回も長いことお付き合いいただきどうもありがとうございます。
次回は「わたしの1日」をテーマに書く予定でいます。
やばい!皆様の期待に応えられるようななカッコイイ1日を過ごしているわけでもないので、ネタが無い!私の作った普段の料理などを紹介してみようかな〜。

Iina

 
次回のiinaさんの連載予定は10月10日頃になります。
是非、お楽しみに。

 
 

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